放射性物質拡散の抑制対策
水田代掻きによる放射性セシウム拡散の抑制対策について
いよいよ平成24年度の田植えの時期となり、各地区で準備が開始されています。
そのような中、水田内に堆積した放射性セシウムの代掻き~田植作業に伴う水田外への流
出、つまり二次拡散による環境への影響が懸念されています。
出、つまり二次拡散による環境への影響が懸念されています。
残念ながら当地域内の河川水を測定した結果では、原因が代掻き排水にあると確定された
ものではないにしろ、濁った水から放射性セシウムが検出されています。
ものではないにしろ、濁った水から放射性セシウムが検出されています。
※<参考試料.1>参照
当地域内の水田土壌の表土部分(深さ約5cm)に堆積している放射能の量は2500
(ベクレル/キログラム)程度が平均的である言えますが、そのような中で稲作を行う上
では様々な対応策が必要となり、作物への移行による影響のみならず、周辺環境への影響
(ベクレル/キログラム)程度が平均的である言えますが、そのような中で稲作を行う上
では様々な対応策が必要となり、作物への移行による影響のみならず、周辺環境への影響
についても十分な配慮が望まれるところです。つきましては、以下の放射能拡散防止策を
紹介します。
紹介します。
1.水田の代掻きによって発生するリスク
例として、水田の耕作面積を200町歩と仮定した場合の、水田内に堆積している放射
性セシウムの量は約64.4ギガベクレル[約644億= 6.44×1010 (Bq)]と推計されます。
性セシウムの量は約64.4ギガベクレル[約644億= 6.44×1010 (Bq)]と推計されます。
※<参考試料.2>を参照
それらの放射性セシウムの何割(*1)かは水田代掻き~田植えの作業時の排水(*2)
によって土壌と一緒に水田外へ流失しますが、河川本流や中小河川・用水路を通じ
て下流へ向かい、河川の土壌などに一時的に堆積しつつ、いずれは全て河口から沿
岸海域へと流出します。
によって土壌と一緒に水田外へ流失しますが、河川本流や中小河川・用水路を通じ
て下流へ向かい、河川の土壌などに一時的に堆積しつつ、いずれは全て河口から沿
岸海域へと流出します。
当然、雨季には水田からの放射性セシウム以外にも山林や原野などからの流出・移
動 分も加わることでその量はさらに大きくなります。
動 分も加わることでその量はさらに大きくなります。
*1 水田除染実験では代掻き排水で、約8割の放射性セシウムの排出しました。
*2 通常の代掻きでは散布肥料を保持するために排水はほとんど行わないとするなら
ば、流出はむしろ田植え時の方が多くなるとも考えられます。
ば、流出はむしろ田植え時の方が多くなるとも考えられます。
【懸念される影響】
(1)河川・用水路には、堆積土砂等により数多くのホットスポットが発生し、場合に
よっては住宅地の放射線量の上昇が起こる。但し、この現象は9月以降に用水路や
側溝の底が乾燥してから起きる。
よっては住宅地の放射線量の上昇が起こる。但し、この現象は9月以降に用水路や
側溝の底が乾燥してから起きる。
(2)流出した放射性セシウムの一部は、川底・河岸の土壌や堆積物有機物に混入・付
着し、長期間にわたって留まり続けることになり、流域の生態系の放射性セシウム
汚染が甚大なものになりかねない。最終流出先の沿岸海域(特に磯場)についても
同様である。
着し、長期間にわたって留まり続けることになり、流域の生態系の放射性セシウム
汚染が甚大なものになりかねない。最終流出先の沿岸海域(特に磯場)についても
同様である。
(3)流出・堆積した土砂・塵芥が乾燥すると、放射性セシウムが濃縮されることでよ
り高い放射線を発するようになり、除染作業が容易にできなくなる可能性がある。
り高い放射線を発するようになり、除染作業が容易にできなくなる可能性がある。
[補足説明]
汚染原因となっている放射性物質は、セシウム134,セシウム137にほぼ特定
されますが、セシウムは土壌の粘土成分に強く結合して一旦結合すると容易には分離
しません。その特徴から自然界では微細な有機物(ほこり)が空中飛散するか、水の
中に混入することによって移動します。
されますが、セシウムは土壌の粘土成分に強く結合して一旦結合すると容易には分離
しません。その特徴から自然界では微細な有機物(ほこり)が空中飛散するか、水の
中に混入することによって移動します。
従って、水田・畑においては農業用水や雨水による動が大半となります。
放射性セシウムによる汚染が確認された水を、沈殿処理又はフィルターでろ過して
不純物を除去した後に測定するとほとんどの場合で大幅に数値は下がります。
不純物を除去した後に測定するとほとんどの場合で大幅に数値は下がります。
2.水田内からの放射性セシウム拡散抑制対策
「サンドトラップ」「ゼオライト(吸着材)」などを排水路に設置して、汚れた水を
通過させることによって放射性セシウム拡散の抑制効果(100%ではないにしても)
が期待されます。よって、各水田からの排水路が集合して河川に落水する手前の場所
に、ネット詰めしたゼオライトを積んだ「堰」を設置します。※ゼオライトの効果は
<参考試料.3>参照
また、この対策の実践にあたっては水利上の連鎖性を持つ営農者の方々でグループ
を編成して管理・運営にあたると良いでしょう。
通過させることによって放射性セシウム拡散の抑制効果(100%ではないにしても)
が期待されます。よって、各水田からの排水路が集合して河川に落水する手前の場所
に、ネット詰めしたゼオライトを積んだ「堰」を設置します。※ゼオライトの効果は
<参考試料.3>参照
また、この対策の実践にあたっては水利上の連鎖性を持つ営農者の方々でグループ
を編成して管理・運営にあたると良いでしょう。
[設置手順]
1) 各地区水田の排水経路を調査して設置場所とゼオライトの数量を決めます。
a.水量によって越水が起こりにくい「高さ」と「幅」とします。
b.ゼオライト通過にかかる時間が長いほど抑制・吸着効果はあがりますので、
越水せずに通過できるよう、水量に見合った水路の容積を確保します。
c.上流側排水路が下流側の用水路になる場合(還流)があるので、そのような水
路では中間にもゼオライト堰を設置します。
越水せずに通過できるよう、水量に見合った水路の容積を確保します。
c.上流側排水路が下流側の用水路になる場合(還流)があるので、そのような水
路では中間にもゼオライト堰を設置します。
2) ゼオライトを約5kg毎にネット詰めして準備します。※以下「ゼオライト」
3) ゼオライトを搬入して「堰」を設置します。
d.設置する際は個々のゼオライトをロープ等で連結し、畦などに打った杭に固縛
するか丈夫な網などで保持することで流出防止をはかります。
するか丈夫な網などで保持することで流出防止をはかります。
[設置時期と期間]
4) 基本的に「代掻き~田植」の期間
e.本来であれば作業開始前に設置を終えるべくですが、すでに始まっている田植
えの一連作業が始まっている地域では、個々の都合の中で進めている作業の中断
は影響が大きいので、設置作業を並行して行うことでもやむを得ないと思います
が、できるだけ速やかに行うことが望まれます。
えの一連作業が始まっている地域では、個々の都合の中で進めている作業の中断
は影響が大きいので、設置作業を並行して行うことでもやむを得ないと思います
が、できるだけ速やかに行うことが望まれます。
f.排水からの放射能流出を抑制するための「堰」の設置は、「代掻き~田植」の
期間内でも十分効果が期待できます。
期間内でも十分効果が期待できます。
g.それ以後は、一旦洗浄したゼオライトを「用水」側の水路に移動・設置して、
用水の除染に転用できます。
用水の除染に転用できます。
h.ゼオライトの放射性セシウム吸収能力は基本的に持続しますので、取扱いに支
障をきたす放射線量に達しない限りは継続して使用できます。
障をきたす放射線量に達しない限りは継続して使用できます。
i.放射性セシウムを取り込んだゼオライトでも、用水路内で水に浸かった状態又
は湿った状態であれば高い放射線量を発することはありません。※乾燥時は注意
は湿った状態であれば高い放射線量を発することはありません。※乾燥時は注意
j.使用を終了したゼオライトは行政側に回収を委ねるか、地中埋設も可能です。
※ゼオライトからのセシウム遊離・放出はほとんど起こりません。
※ゼオライトからのセシウム遊離・放出はほとんど起こりません。
[管理・保守]
5) 定期的に巡回して破損や流出が起こらないように保守を行います。
k.固縛ロープの点検
l.堆積した塵芥や土砂の除去・回収
※これらの塵芥や土砂は濃縮されて高い放射能を持っている場合があるので安全
な服装・装備で作業し、回収物はビニール袋などに収納する必要があります。
尚、この作業は農地の除染を行う上でも効果があります。
な服装・装備で作業し、回収物はビニール袋などに収納する必要があります。
尚、この作業は農地の除染を行う上でも効果があります。
6) 大雨・台風等で増水が予測される場合は事前に引き上げて破壊・流出されない
ようにします。
ようにします。
[その他]
7) ゼオライト堰設置後の各水系・河川の放射能と設置したゼオライトの放射線量
は定期的に測定していく必要があります。
は定期的に測定していく必要があります。
<参考試料.1> 河川(H24年4月29日-水田代掻き開始後)
※下段は検出限界,単位:(Bq/kg)
※検出された放射性セシウムが水田代掻きによるものかは確定的ではありません。
○○川
|
下流域
|
中流域?
|
中流域?
*原水
|
中流域?
*ろ過後
|
N.D
|
N.D
|
13.7
|
N.D
|
|
Cs134:13.2
Cs137:13.8
|
Cs134:13.9
Cs137:14.5
|
Cs134:15.0
Cs137:7.88
|
Cs134:13.9
Cs137:13.2
|
○○川
|
下流域
|
中流域
*原水
|
中流域
*ろ過後
|
N.D
|
23.8
|
N.D
|
|
Cs134:13.7
Cs137:14.3
|
Cs134:10.2
Cs137:20.5
|
Cs134:13.8
Cs137:14.4
|
<参考試料.2> 水田土壌の放射能量試算
当地域の水田内に堆積した放射性セシウムの平均的数値は、深さ5cmの土壌1kg
あたりで約2,500(Bq/kg)となっており、それを元に各単位面積あたりに堆積している
放射性セシウムの量は以下に推計されます。
◎ 深さ5cmから1kgの土壌を測定した場合の放射能量の合計(Cs134とCs137の合
計)が2,500(Bq/kg)であった場合の、面積(1m2)当たりの放射能量は以下の計算式
によって求められる。
あたりで約2,500(Bq/kg)となっており、それを元に各単位面積あたりに堆積している
放射性セシウムの量は以下に推計されます。
◎ 深さ5cmから1kgの土壌を測定した場合の放射能量の合計(Cs134とCs137の合
計)が2,500(Bq/kg)であった場合の、面積(1m2)当たりの放射能量は以下の計算式
によって求められる。
◇土壌1(kg)を体積(cm3)に換算(土壌の密度を1.3g/cm3とした場合)
体積 : 1(kg)÷1.3(g/cm3)=約769(cm3)
◇汚染が深さ5cmところに1cm幅でのみ汚染土壌が存在とする場合の面積
面積 : 769(cm3 )÷1(cm)=769(cm2) = 769 ×10-4(m2)
◇面積(m2)当たりの放射能量・・・以後「Z」と表記する
2,500(Bq/kg)÷[769×10-4(m2)]= 3.25×104(Bq/m2) ・・・「Z」
1反 : Z × 992m2 =3.22×107 (Bq/m2)→ 32,240,000 (Bq/m2)
1町 : Z × 9,917m2 =3.22×108 (Bq/m2)→ 322,302,500 (Bq/m2)
200町では、
6.44×1010 (Bq)= 64,460,500,000(Bq/m2) /約64.4ギガベクレル
<参考試料.3> ゼオライトによる放射性セシウム低減効果
約1000ccの放射性セシウムで汚染した水に、ゼオライト500gを投入し、一
定時間保持した後に測定した結果です。沈降による水中濃度の低減を考慮し、再度撹
拌してから測定しています。※この原水ではセシウム137は不検出でした。
定時間保持した後に測定した結果です。沈降による水中濃度の低減を考慮し、再度撹
拌してから測定しています。※この原水ではセシウム137は不検出でした。
|
投入前
|
30分後
|
60分後
|
Cs137
|
N.D
|
N.D
|
N.D
|
Cs134
|
27.7
|
16.7
|
ND
|
放射性セシウム総量
|
27.7
|
16.7
|
|
Cs137検出限界
|
21.6
|
20.1
|
19.4
|
Cs134検出限界
|
16.8
|
13.6
|
13.9
|